HS2022:第28.41項の解説
この項には、オキソ金属酸及びペルオキソ金属酸(無水物を構成する金属酸化物に相当する。)の塩を含む。
この項に属する主なものは、次の物品である。
(1)アルミン酸塩(aluminates):水酸化アルミニウムの誘導体
(a)アルミン酸ナトリウム:ボーキサイトを水酸化ナトリウム溶液で処理して得られる。白色の粉(水に可溶)、水溶液又はペーストとして供される。媒染剤(アルカリ媒染)、レーキ製造、紙のサイジング、せっけんの充てん料、石膏の硬化剤、乳白ガラスの製造、工業用水の精製等に使用する。
(b)アルミン酸カリウム:ボーキサイトを水酸化カリウムに溶解して得られる白色の微結晶性塊で、吸湿性があり水に可溶である。ナトリウム塩と用途は同様である。
(c)アルミン酸カルシウム:ボーキサイトと酸化カルシウムを電気炉で溶融して得られる白色の粉で水に不溶。媒染剤、工業用水の精製(イオン交換体)、製紙(サイジング)、ガラス、せっけん、特殊セメント、研磨材及びその他のアルミン酸塩の製造に使用する。
(d)アルミン酸クロム:酸化アルミニウム、ふっ化カルシウム及び二クロム酸アンモニウムの混合物を加熱して得られる。陶磁器用着色料に使用する。
(e)アルミン酸コバルト:アルミン酸ナトリウムとコバルト塩から製造される。単独又は酸化アルミニウムと混合してコバルトブルー(Thenard's blue)を形成する。セルリアンブルー(cerulean blue)(アルミン酸亜鉛と共に)、アズレブルー(azure blue)、スマルトブルー(smalt blue)、ザクセンブルー(Saxony blue)、セーブルブルー(Sevres blue)等の製造に使用する。
(f)アルミン酸亜鉛:白色の粉で、アルミン酸ナトリウムと同様の用途に使用する。
(g)アルミン酸バリウム:ボーキサイト、重晶石(barytes)及び石炭から得られる白色又はかっ色の塊で、工業用水の精製及びアンチスケール剤に使用する。
(h)アルミン酸鉛:酸化鉛と酸化アルミニウムの混合物を加熱して得られる固体で、容易に溶融せず、白色顔料、耐火れんが又はライニングの製造に使用する。
この項には、天然のアルミン酸ベリリウム(金緑石、chrysoberyl)を含まない(25.30、71.03又は71.05)。
(2)クロム酸塩(chromates):中性又は酸性のクロム酸塩(二クロム酸塩を含む。)、三クロム酸塩、四クロム酸塩及び過クロム酸塩は、種々のクロム酸、特に純粋な状態では単離されないクロム酸(H2CrO4)、二クロム酸(H2Cr2O7)から得られる。
これら毒性のある塩の主なものは、次の物品である。
(a)クロム酸亜鉛:二クロム酸カリウムで亜鉛塩を処理すると含水又は塩基性クロム酸亜鉛が得られる。粉状で水に不溶。単独又は混合し、亜鉛黄として顔料に使用する。
また、プルシアンブルーとの混合物は亜鉛緑(zinc green)となる。
(b)クロム酸鉛
中性の人造クロム酸鉛は、酢酸鉛を二クロム酸ナトリウムに作用させて得られる。沈殿の方法によって黄色、橙色又は赤色の粉のものがある。単独又は他の物品と混合し、顔料(クロムイエロー)となり、エナメル、陶磁器、ペイント及びワニス製造等に使用する。
塩基性塩は、単独又は他の物品と混合してクロムレッド又はペルシャンレッド(persian red)となる。
(c)ナトリウムのクロム酸塩:クロム酸ナトリウム(Na2CrO4・10H2O)は、天然の酸化鉄クロム(クロム鉄鉱、chromite)に石炭及び炭酸ナトリウムを混合し、ばい焼することによりクロムの製造の際に得られる。大きな黄色の結晶で、潮解性があり水によく溶ける。染色(媒染剤)、皮なめし、インキ及び顔料又はその他のクロム酸塩、二クロム酸塩の製造に使用し、また、硫化アンチモンと混合して写真用せん光粉末に使用する。
二クロム酸ナトリウム(Na2Cr2O7・2H2O):クロム酸ナトリウムから得られる潮解性の赤色結晶で水に可溶。加熱すると無水塩となり、潮解性が小さくなる(すなわち、溶解又は鋳造クロム酸塩)。これは、少量の硫酸ナトリウムを含んでいることがある。なめし(クロムなめし)、染色(媒染剤及び酸化剤)、有機合成の酸化剤、写真、印刷、花火、脂肪の精製又は脱色、二クロム酸バッテリー及び二クロム酸ゼラチンの製造(光の影響下で熱水に不溶のものに変わる。)、浮遊選鉱(浮力減少)、石油精製並びに防腐剤に使用する。
(d)カリウムのクロム酸塩:クロム酸カリウム(K2CrO4)(黄クロム酸カリウム)は、クロム鉄鉱(chromite)から製造される。黄色の結晶で水に可溶、有毒である。
二クロム酸カリウム(K2Cr2O7)(赤クロム酸カリウム)は、同じくクロム鉄鉱から得られる。橙色の結晶で水に可溶、有毒である。二クロム酸塩の粉じん及び蒸気は、鼻骨及び軟骨を侵す。その溶液はかすり傷を負わす。
クロム酸カリウム及び二クロム酸カリウムは、クロム酸ナトリウム及び二クロム酸ナトリウムと同様の目的に使用する。
(e)アンモニウムのクロム酸塩:クロム酸アンモニウム((NH4)2CrO4)は、二酸化クロムの溶液にアンモニアを飽和させて得られる。黄色の結晶で水に可溶。写真及び染色に使用する。
二クロム酸アンモニウム((NH4)2Cr2O7)は、天然の酸化鉄クロム(クロム鉄鉱、chromite)から得られる。赤色の結晶で水に可溶。写真、染色(媒染剤)、皮なめし、油脂の精製、有機合成等に使用する。
(f)クロム酸カルシウム(CaCrO4・2H2O):二クロム酸ナトリウムと白亜から得られる。加熱すると無水塩となり、黄色に変わる。「イエローウルトラマリン」(この名称はクロム酸カルシウムのみに使用する。)等の着色料に使用する。
(g)クロム酸塩マンガン:中性塩(MnCrO4)は、酸化第一マンガンと無水クロム酸から得られるかっ色の結晶で水に可溶、媒染剤に使用する。
塩基性塩は、かっ色の粉で水に不溶、水性ペイントに使用する。
(h)鉄のクロム酸塩:クロム酸第二鉄(ferric chromate)(Fe2(CrO4)3)は、塩化第二鉄とクロム酸カリウムの溶液から得られる。黄色の粉で水に不溶。
塩基性クロム酸鉄は、単独又は混合して、シデリンイエロー(siderin yellow)の名で塗料に使用する。プルシアンブルー(Prussian blue)と組み合わせると亜鉛緑(zinc green)に類似した緑色物が得られる。また、冶(や)金に使用する。
(ij)クロム酸ストロンチウム(SrCrO4):クロム酸カルシウムに類似している。単独又は混合してストロンチウムイエローとなる。絵の具の製造に使用する。
(k)クロム酸バリウム(BaCrO4):塩化バリウムとクロム酸ナトリウムを溶液から沈殿させて得られる。黄色の粉で水に不溶、有毒である。単独又は混合してバリウムイエローとなる。これは、クロム酸カルシウムから得られる類似物品と同様、「イエローウルトラマリン」として知られている。絵の具、窯業、ガラス工業、マッチ製造及び媒染剤に使用する。
この項には、次の物品を含まない。
(a)天然のクロム酸鉛(紅鉛鉱、crocoisite)(25.30)
(b)クロム酸塩をもととした調製顔料(32.06)
(3)マンガン酸塩(manganates)及び過マンガン酸塩(permanganates):これらはマンガン酸(H2MnO4)(単離されない。)及び過マンガン酸(HMnO4)(水溶液中にのみ存在する。)の塩に相当する。
(a)マンガン酸塩:マンガン酸ナトリウム(Na2MnO4)は、天然の二酸化マンガン(26.02、軟マンガン鉱(pyrolusite))と水酸化ナトリウムの混合物を溶融して得られる。緑色の結晶で、冷水に可溶、熱水で分解する。金の冶(や)金に使用する。
マンガン酸カリウム(K2MnO4)は、緑黒色の小結晶で過マンガン酸塩の製造に使用する。
マンガン酸バリウム(BaMnO4)は、二酸化マンガンと硝酸バリウムの混合物を加熱して得られる。エメラルドグリーンの粉で硫酸バリウムと混合してマンガン青となる。絵の具に使用する。
(b)過マンガン酸塩:過マンガン酸ナトリウム(NaMnO4・3H2O)、マンガン酸塩から得られる。赤黒色の結晶、潮解性で水に可溶。消毒剤、有機合成及び羊毛の漂白に使用する。
過マンガン酸カリウム(KMnO4)は、マンガン酸塩から得られるほか、二酸化マンガンと水酸化カリウムの混合物の酸化で得られ、紫色の結晶で、金属光沢を持ち、水に可溶、皮膚を着色する。また、赤紫色の水溶液又はタブレット状で供される場合もある。強力な酸化剤であり、化学試薬、有機合成(サッカリンの製造)、冶(や)金(ニッケル精錬)に使用するほか、脂質、樹脂、絹の糸、織物又は麦わらの漂白、水の精製、防腐剤、染色(羊毛、木材、頭髪染料)、ガスマスク、医薬に使用する。
過マンガン酸カルシウム(Ca(MnO4)2・5H2O)は、マンガン酸アルカリと塩化カルシウム水溶液の電解によって得られる。暗紫色の結晶で水に可溶である。酸化剤及び消毒剤、染色、有機合成、水の精製、紙パルプの漂白に使用する。
(4)モリブデン酸塩(molybdates):モリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩及びポリモリブデン酸(ジモリブデン酸、トリモリブデン酸、テトラモリブデン酸)は、正モリブデン酸(H2MoO4)その他のモリブデン酸から得られる。ある点ではクロム酸塩に類似している。
主なものは、次の物品である。
(a)モリブデン酸アンモニウム:モリブデンの冶(や)金で得られる。含水結晶で緑色又は黄色がかった淡い色をしており、加熱すると分解する。化学試薬、顔料又は難燃剤の製造、ガラス工業等に使用する。
(b)モリブデン酸ナトリウム:光沢のある含水結晶で水に可溶。試薬、顔料、医薬の製造に使用する。
(c)モリブデン酸カルシウム:白色の粉で水に不溶。冶(や)金に使用する。
(d)モリブデン酸鉛:クロム酸鉛と共沈させた人造のモリブデン酸鉛は、深紅色のクロム顔料になる。
この項には、天然のモリブデン酸鉛(モリブデン鉛鉱、wulfenite)を含まない(26.13)。
(5)タングステン酸塩(tungstates)(ウォルフラム酸塩(wolframates)):タングステン酸塩、パラタングステン酸塩及び過タングステン酸塩は、正タングステン酸(H2WO4)その他のタングステン酸から得られる。
主なものは、次の物品である。
(a)タングステン酸アンモニウム:アンモニアにタングステン酸を溶解して得られる。白色の結晶性粉状の含水塩で、水に可溶。難燃性織物、他のタングステン酸塩の製造に使用する。
(b)タングステン酸ナトリウム:タングステン冶(や)金で鉄マンガン重石(wolframite)(26.11)と炭酸ナトリウムから得られる。白色の葉状結晶又は結晶塊で、含水塩は真珠様の光沢をして、水に可溶。タングステン酸アンモニウムと同様の用途のほか、媒染剤、レーキ及び触媒の製造並びに有機合成に使用する。
(c)タングステン酸カルシウム:白色の光沢あるうろこ状で水に不溶。X線のスクリーン又は蛍光灯の製造に使用する。
(d)タングステン酸バリウム:白色の粉で、単独又は混合してタングステン白(tungsten white)又はタングステン酸白の名で絵の具に使用する。
(e)その他のタングステン酸塩:これらには、タングステン酸カリウム(難燃性織物用)、タングステン酸マグネシウム(X線スクリーン用)、タングステン酸クロム(緑色顔料用)又はタングステン酸鉛(顔料用)を含む。
この項には、次の物品を含まない。
(a)天然のタングステン酸カルシウム(灰重石、scheelite)(26.11)
(b)天然のタングステン酸マンガン(マンガン重石、hubnerite)及びタングステン酸鉄(鉄重石、ferberite)(26.11)
(c)無機のルミノホアとして分類される発光性タングステン酸塩(例えば、カルシウム塩又はマグネシウム塩)(32.06)
(6)チタン酸塩(titanates):中性又は酸性のオルトチタン酸塩、メタチタン酸塩及びペルオキソチタン酸塩がある。これらは、二酸化チタン(TiO2)をもととする各種のチタン酸及びチタンの水酸化物から得られる。
チタン酸バリウム及びチタン酸鉛は、白色の粉末で顔料として使用する。
この項には天然のチタン酸鉄(チタン鉄鉱、ilmenite)(26.14)及び無機のフルオロチタン酸塩(28.26)を含まない。
(7)バナジン酸塩(vanadates):中性又は酸性のオルトバナジン酸塩、メタバナジン酸塩、ピロバナジン酸塩及び次亜バナジン酸塩がある。これらは五酸化バナジウム(V2O5)その他のバナジウムの酸化物から誘導される各種のバナジン酸から得られる。
(a)バナジン酸アンモニウム(メタバナジン酸アンモニウム)(NH4VO3):黄白色の結晶粉で冷水に難溶、熱水に易溶で黄色溶液となる。触媒、媒染剤、ペイント及びワニスのドライヤー、陶磁器用着色料、インキの製造等に使用する。
(b)ナトリウムのバナジン酸塩(オルトバナジン酸ナトリウム及びメタバナジン酸ナトリウム):水化物は白色の粉末又は結晶で水に可溶。アニリンブラック染色に使用する。
(8)鉄酸塩(ferrates)及び亜鉄酸塩(ferrites):これらは、それぞれ水酸化第二鉄(Fe(OH)3)及び水酸化第一鉄(Fe(OH)2)から得られる。鉄酸カリウムは、黒色の粉で水に溶けて赤色溶液となる。
「鉄酸塩」の名称は、陶磁器用着色料として使用する酸化鉄とその他の金属酸化物との単なる混合物に対して間違って用いることがあるが、このものは32.07項に属する。また、この項には、マグネタイトすなわち磁性酸化鉄(FeO4)(26.01)及びハンマースケール(26.19)を含まない。
(9)亜鉛酸塩(zincates):両性水酸化亜鉛(Zn(OH)2)から得られる化合物である。
(a)亜鉛酸ナトリウム:酸化亜鉛に炭酸ナトリウムを作用させて又は金属亜鉛に水酸化ナトリウムを作用させて得られる。硫化亜鉛(ペイント用)の製造に使用する。
(b)亜鉛酸鉄:陶磁器用着色料として使用する。
(c)亜鉛酸コバルト:単独で又は酸化コバルトその他の塩と混合してコバルト緑又はリンマン緑(Rinmann's green)に使用する。
(d)亜鉛酸バリウム:水酸化バリウムの水溶液に硫酸亜鉛のアンモニア性溶液を作用させ
ると沈殿して得られる。白色粉末、水に可溶。硫化亜鉛(ペイント用の製造に使用する。)
(10)すず酸塩(stannates)(オルトすず酸塩及びメタすず酸塩):すず酸から得られる。
(a)すず酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O):すず、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム及び硝酸ナトリウムの混合物を溶融して得られる。硬い不規則な塊で水に可溶。不純物(ナトリウム塩及び鉄塩)の割合によって白色又は着色のものがある。染色(媒染剤)、ガラス工業、窯業、砒素から鉛の分離、絹のすずサイジング及び有機合成に使用する。
(b)すず酸アルミニウム:硫酸すずと硫酸アルミニウムとの混合物を加熱して得られる白色の粉で、エナメル又は窯業用乳白剤に使用する。
(c)すず酸クロム:桃色で、陶磁器用着色料、絵の具に使用する。また、絹のすずサイジングに使用する。
(d)すず酸コバルト:単独又は混合して顔料(スカイブルー)、ペイントに使用する。
(e)すず酸銅:単独又は混合して使用し、「すず緑(tin green)」として知られている。
(11)アンチモン酸塩:酸化アンチモン(Sb2O5)に相当する種々の酸の塩である。ある点で砒酸塩に類似している。
(a)メタアンチモン酸ナトリウム:水酸化ナトリウムと五酸化アンチモンから得られる白色の結晶性粉で水に難溶。窯業又はガラス工業用の乳白剤、チオアンチモン酸ナトリウム(Schlippe's salt)(28.42)の製造に使用する。
(b)カリウムのアンチモン酸塩:最も重要なものは、アンチモン酸水素カリウムで、硝酸カリウムと金属アンチモンを混合し、か焼して得られる白色の結晶性粉であり、医薬(下剤)及び陶磁器用顔料に使用する。
(c)アンチモン酸鉛:五酸化アンチモンを鉛丹と溶融して得られる黄色の粉で水に不溶。単独又は塩化酸化鉛と混合して窯業用、ガラス用又は絵の具用顔料(ネープルスイエロー(Naples yellow)又はアンチモンイエロー)に使用する。
この項には、アンチモン化物は含まない(28.53)。
(12)鉛酸塩(plumbates):両性の二酸化鉛(PbO2)から得られる。
鉛酸ナトリウムは、着色料に使用する。鉛酸カルシウム(黄色)、鉛酸ストロンチウム(栗色)又は鉛酸バリウム(黒色)は、マッチの製造及び花火に使用する。
(13)その他のオキソ金属塩又はペルオキソ金属酸の塩:次の物品を含む。
(a)タンタル酸塩(tantalates)及びニオブ酸塩(niobates)
(b)ゲルマニウム酸塩(germanates)
(c)レニウム酸塩(rhenates)及び過レニウム酸塩(perrhenates)
(d)ジルコン酸塩(zirconates)
(e)ビスマス酸塩(bismuthates)
この項には、次の物品を含まない。
(a)貴金属の化合物(28.43)
(b)放射性元素又は同位元素の化合物(28.44)
(c)イットリウム、スカンジウム又は希土類金属の化合物(28.46)
(d)水銀(28.52)
フルオロチタン酸塩のようなふっ素錯塩は、28.26項に属する。
