進め方が分かるフローチャート:PHASE 1 EPA/FTA利用の確認

対象産品EPAFTAによる削減効果額を知ろう!

EPA/FTAは、利用すれば必ず関税の減免を受けられる、というものではありません。
輸入者からEPA/FTAを使いたいとリクエストを受けたら、まずは、EPA/FTAを利用することで本当にメリットがあるのかどうか、つまり、どれほどの金額が削減できるのかをきちんと確認をすることから始めます。

作業手順

STEP1EPA/FTA利用の確認のための情報を収集しよう!
ポイント

EPA/FTAのメリットを確認するために最低限必要となる4項目

EPA利用確認シート 

  • 「EPA利用確認シート」を用意します
  • 「EPA利用確認シート」へ①~④(以下4項目)を調べながら入力し、販売価格を記入することで、EPA/FTAのメリット(関税削減可能額)が算出されます
  • フォームはこちらからダウンロードできます

記載事項

①利用可能協定
HSコード(輸入国側)
③通常の関税率(%)
EPA税率

利用可能な協定一覧

協定 証明制度
第三者証明制度 自己証明制度 協定輸出者制度
2国間協定 1 日シンガポール協定    
2 日メキシコ協定  
3 日マレーシア協定    
4 日チリ協定    
5 日タイ協定    
6 日インドネシア協定    
7 日ブルネイ協定    
8 日フィリピン協定    
9 日スイス協定    
10 日ベトナム協定    
11 日インド協定    
12 日ペルー協定  
13 日オーストラリア協定  
14 日モンゴル協定    
15 日EU協定    
16 日米貿易協定  
(輸入者による自己申告のみ)
 
17 日英協定    
多国間協定 18 日アセアン協定    
19 CPTPP*1    
20 RCEP協定
(AU、NZのみ*2)
多国間協定の加盟国
日アセアン協定 日本、シンガポール、ラオス、ベトナム、ミャンマー、ブルネイ、マレーシア、タイ、カンボジア、フィリピン、インドネシア
CPTPP*1 日本、シンガポール、ベトナム、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ペルー (2022年7月末時点、未発行)
マレーシア、ブルネイ、チリ
RCEP協定 日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、
タイ、ベトナム、韓国、マレーシア
(2022年7月末時点、未発行)
インドネシア、ミャンマー、フィリピン

*¹ Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の略
*² RCEPの自己証明制度は、オーストラリアとニュージーランドについてのみ、発効と同時に利用可能です。
  他の締約国については、2022年7月末時点では自己証明制度は利用できません。

輸入国で認められたHSコードであることが重要!

HSコードは、6桁までが世界共通の分類となりますが、同じ製品でも、各国税関や担当者によって解釈の違いが発生することがあります。
解釈の違いが発生した場合EPA/FTAにおいては原産地証明書を受理する輸入国税関の判断が優先されるため、予め輸入国税関との認識を一致させておくことが重要です。

お役立ちサイト
FTA Port:世界の税関 – 関税率検索サイト

EPA/FTAに必要な情報を輸入国税関のホームページで確認できるサイト

できるコト

✔ 各国のHSコードの検索
✔ 各国の通常の関税率・EPA税率の検索
✔ 各国の事前教示制度の検索

※輸入国税関のホームページへのリンクとなるため、上記のうち何が検索可能かは、各国により異なります

こんな方におすすめ!

✔ 輸入者へ確認する上で情報整理をしたい方
✔ 輸入者から入手した情報について確認したい方

日本税関:輸出統計品目表

日本の輸出通関のために用いるHSコードを特定する際の品目表が掲載されているサイト

できるコト

✔ HSコード(6桁)の確認
✔ 日本からの輸出における統計細分(7桁目以降)の確認

こんな方におすすめ!

✔ 輸出品のHSコードの候補を調べたい方

FedEx Trade Networks/JETRO:World Tariff

最新年次版のHSコードをキーにして、MFN税率とEPA税率を確認できるサイト

できるコト

✔ 各国のMFN税率・EPA税率の確認
✔ 複数協定のEPA税率比較
✔ 各協定のEPA譲許表

こんな方におすすめ!

✔ 輸入国での税率を確認したい方
✔ EPA/FTAを利用するとメリットがあるのか知りたい方
✔ 利用協定を確定するため関税率比較をしたい方

※「WorldTariff」は米国FedEx Trade Networks社が有料で提供している世界の関税率情報データベースです。
 JETROと同社との契約で、日本の居住者はどなたでも、同社のサイトから無料で「WorldTariff」をご利用いただけます。
 初めてデータベースを利用する場合にはユーザー登録が必要です。ユーザー登録はこちらから。

※必ずしも最新の情報でアップデートされていない可能性もありますので、輸入国税関の情報の確認用としてご活用ください。

International Trade Centre:Rules of Origin Facilitator

最新年次版のHSコードをキーにして、MFN税率/EPA税率/PSR等を確認できるサイト

できるコト

✔ 各国のMFN税率・EPA税率の確認
✔ 複数の国からの輸入をする際のEPA税率比較
✔ 他国間協定の品目別原産地規則

こんな方におすすめ!

✔ 輸入国での税率を確認したい方
✔ EPA/FTAを利用するとメリットがあるのか知りたい方
✔ 多国間協定も含めて、利用協定を確定するために関税率比較をしたい方

※必ずしも最新の情報でアップデートされていない可能性もありますので、輸入国税関の情報の確認用としてご活用ください。

FTA Port:HS LAB

EPA/FTA原産地証明に特化したHSコードの情報提供サイト

できるコト

✔ 特定したHSコード(協定年次版HSコード)からのMFN/EPA税率

こんな方におすすめ!

✔ MFN/EPA税率を日本語のWebサイトで確認したい方

STEP2EPA/FTA利用の判断
ポイント

「EPA/FTA適用による効果額」が関税が減免されたことによるメリットです

▶応用1:複数協定でのEPA/FTA利用の確認

複数協定の中から選択できる場合は、EPA税率の小さいものを選ぶことで削減効果額が大きくなります。
また、協定によって品目別原産地規則が異なるので、易しい品目別原産地規則を選ぶことで、基準をクリアしやすくすることも可能です。

▶応用2:EPA税率も品目別原産地規則も同じ場合

○2国間協定 VS 多国間協定
多国間協定を選択すれば、1つの協定の証明が、他の締約国への輸出の際にも再利用できるので、メリットがあります。

○第三者証明制度 VS 自己証明制度
一般的な各証明制度のメリット、デメリットは以下の通りです。

証明書制度 メリット デメリット
第三者証明制度 原産性の証明内容について、日本商工会議所のチェックが入る ・原産地証明書の発給に手数料がかかる
・日本商工会議所への手続きの時間がかかる
自己証明制度 ・原産地証明書を自社で作成するため
・リードタイムが短縮できる
・原産性の証明内容について、第三者のチェックが入らない

▶応用3:EPA/FTA適用による効果額のメリットの享受について

EPA/FTA適用による効果額は、契約により異なりますが、多くが関税を納める輸入者に直接的なメリットとなります。
一方で、PAHSE2で実施する輸出者側の工数は一定程度を要します。
このメリットを享受する側(輸入者)と工数を要する側(輸出者)のギャップを埋めるために、両者でメリットを享受し合うことを検討してみてください!

– グループ会社間の場合
グループ全体の利益増加

– グループ会社間以外の場合
関税の削減メリットを、輸入者から依頼される前に、逆に輸入者へEPA/FTA利用による関税削減を提案してみましょう。

・現地での価格の引き下げによる販売量の増加
・現地での販売代理店の販売手数料の増加による販売量の増加
・EPA/FTA利用にかかる輸出者から輸入者へのコストの請求
・効果額の折半/輸出者から輸入者への販売価格の値上げ
・値引き依頼への対抗策としての提示

等、営業のツールとして使えます。
見積もり段階で関税削減メリットを折込んでおくことも大切です。